キャリアと家庭はどうすれば両立できるか、そもそも両立は必要なのか~世界を動かす女性に学ぶ5つの考え方~

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キャリアと家庭の両立で悩む女性は多くいます。そして、その女性の夫や恋人である男性も、一緒に悩むことが多いでしょう。

「両立したい」と強く思っている女性(と支える男性)は、実際に両立に成功している女性の実例を知りたいでしょう。そして、その生き方をモチベーションの起爆剤にしたいかと思います。

逆に「両立しないとダメなのか?」と疑問を感じている人もいるでしょう。

  • どこまで頑張れば偉いのか?
  • マラソンは、死ぬまで走った人間が一番偉いのか?
  • それができない人間は負け犬なのか?

という疑問です。こういった「両立を諦めている人」にも「両立したい人」にも参考になる本が『LEAN IN』です。

本書は「世界で最も有力な女性50人」の一人であり、フェイスブックの最高執行責任者を務めるシェリル・サンドバーグが、2013年に出版した世界的ベストセラーです。世界最高レベルのキャリアと家庭を両立させているシェリルの生き方は、多くの働く女性にとってバイブルとなりました。

今回は、そんな『LEAN IN』から、キャリアと家庭を両立させるために役立つ、本書の5つのメッセージを抜き出して紹介します。一見「がんばって両立させることだけが偉い」と見えるメッセージですが、そうではありません。

というのは、本書の出版から2年後に、現実世界で「どんでん返し」というべき出来事が起きているためです。その出来事も含めて見ると、本書は「両立など必要ないのでは?」と思っている人にとっても、大きなヒントになる本です。

そうした現実の出来事も含め、本書が説く5つのメッセージを紹介していきます。

仕事を決める基準は一つしかない、それは成長、それも急成長だ

「仕事を決める基準は一つしかない、それは成長、それも急成長だ」の部分

この言葉は、GoogleのCEOだったエリック・シュミットのものです。

エリック・シュミット出典:エリック・シュミット | Wikipedia

シェリルは、アメリカ財務省に務めた後、Googleに入社しました。その入社前に、当時GoogleのCEOだったエリックにアドバイスを求めたのです。

その頃、シェリルの貯金は急速に減っていました。早く条件のいい仕事を見つける必要があり、実際に大企業からのオファーも多数来ていたのです。

一方、Googleはまだ完全に無名の会社で、条件だけを比較すると明らかに分が悪い。彼女は各社の条件をスプレッドシートで「見える化」しましたが、やはりそのシートでもGoogleは分が悪い。

ということを、エリックに相談したのです。そのときのエリックの対応を、シェリルはこう書いています。↓

彼は私のスプレッドシートを手で隠すと、アホやな、と言った(これも最高のアドバイスの一部である)。そして、仕事を決めるときの基準は一つしかない、それは成長、それも急成長だと断言した。(P.83)

実際、Googleはシェリルが入社してからの数カ月間の間に、社員百数十人から数千人にまで、急成長しました。世界のビジネスの歴史の中でも指折りといえる急成長の流れの中に、エリックもシェリルもいたわけです。

こういう話を聞くと「急成長していない会社にいる自分はダメなんだろうか」と思う人もいるかもしれません。しかし、それを言ったら世界の70億人のほとんどがダメになってしまうので、自分を卑下する必要はないでしょう。

当時のシェリルのように、現時点で、

  • 急成長する会社に入るチャンスがある
  • 自分もその会社に入りたい
  • しかし、お金などの理由で迷っている

という人が、シェリルとエリックの言葉をストレートに受け取るのがいいでしょう。成長していない「大多数の平凡な企業」もあってこそGoogleのビジネスも成り立っているので、「どの会社がいい、悪い」と、過剰に気にすることはないといえます。

キャリアは梯子ではなくジャングルジム

「キャリアは梯子ではなくジャングルジム」の部分

梯子は一直線で上に登っていくものですが、ジャングルジムは縦横無尽に移動できるものです。シェリルは「人間のキャリアもそういうものだ」と指摘しています。

英語では、出世はよく梯子に喩えられる。だがこれは、もはやほとんどの人に当てはまらない。(中略)キャリアは梯子ではなくジャングルジムだ。(P.76)

「キャリアは一直線ではない」という考え方は、そのまま家庭との両立にもつながります。たとえば、昭和の女性の場合、

  • 結婚して辞める
  • そのまま育児に没頭し復職はしない

というパターンが一般的でした。このような「皆が歩んでいる一直線の梯子のキャリア」を、多くの女性が歩まされていたのです。

しかし、キャリアが梯子からジャングルジムの時代になれば、女性の復職もしやすくなります。女性の復職に限らず「あらゆるパターンが自由」になるためです。

  • 入るのも自由
  • 辞めるのも自由
  • 戻るのも自由
  • 副業も自由
  • ただし、すべて自己責任

という時代になりつつあるわけです。不自由なものの、会社に定年まで守ってもらえる時代は終わり、自力で野性的に生きていく時代になったわけですね。

そういう時代だから「女性ももっと自己主張をして、社会に出ていこう」ということを、シェリルは訴えているわけです。

※「アメリカはとっくにそうなっているのでは」と思うかもしれませんが、意外にもなっていないことが本書でわかります。

完璧を目指すより、まず終わらせろ

「完璧を目指すより、まず終わらせろ」の部分

この言葉はフェイスブックのCEO・マーク・ザッカーバーグの言葉であり、フェイスブックの社訓の一つでもあります。仕事と家庭の両立で悩んだとき、シェリルはいつもこの言葉を意識していたといいます。

私が大好きなフェイスブックのポスターがもう一つある。「完璧をめざすより、まず終わらせろ」がそれだ。(P.176)

この考え方は、シェリルやザッカーバーグに限らず、あらゆる人が主張しています。日本でも「6割主義・8割主義」などの言葉があります。

その中であえてシェリルやザッカーバーグがこれを説く意味は、Facebookのトップでも、常に完璧な仕事をできているわけではないとわかることにあります。

ビジネスでも家事でも、完璧にしようと思えばいくらでも上があるものです。しかし、どこかで妥協して完結させ、前に進まなければいけません。

「まず終わらせる」という明確なゴールがあることで、「完璧なクオリティ」という幻から解放され、毎回の仕事の目標を達成しやすくなるでしょう。

辞めなければならないときまで辞めないで

「辞めなければならないときまで辞めないで」の部分

折しもこの本が出版された頃、日本ではある新聞記事が話題になっていました。日本で就活をする女子学生は「幻の赤ちゃん」を抱いて就職活動をしているという記事です。

子供も夫も、場合によっては彼氏すらもいない段階から、「仕事と家庭を両立できるだろうか」と心配しながら就活をしているということです。これは女子学生たちが悪いのではなく、社会がそう仕向けているのです。

本書によれば、これは日本だけでなくアメリカでも見られる傾向です。本当は仕事をしたいと思っている有能な女性も、将来の出産のために早くから仕事を辞めてしまうというパターンが多いといいます。

シェリルはそのような女性たちに向かって、下のように書いています。

ここで私が言いたいのは、子育てのために仕事を辞めるのはその必要ができたとき、つまり子供が生まれたときだということである。(P.135)

このメッセージが「辞めなければならないときまで辞めないで」という章題にもなっています。

  • 実際に子供が生まれて、両立に物理的な限界が来た
  • 会社から辞めるように言われた

このようなケースでなく、仕事を続けたいのであれば続けていい、とシェリルは言っているのです。「私たちは、自分で思うほど自分の進路を、自分で決めていないのかもしれない」と彼女はいいます。

「辞めなければいけないときまで辞めない」という考えの根本は「自分の人生は自分で決める」ということだといえるでしょう。言葉にするのは簡単ですが、実行して貫くのはとても難しいという行動の好例です。

キャリアと幸せは両立できる

LEAN IN出典:LEAN IN | 日本経済新聞出版

本書のテーマを一言でまとめると「キャリアと幸せは両立できる」というものです。これは、日本語版の帯でも、上の画像のように大きく書かれています。

実は、シェリルのレベルになると、必ずしも両立できるとは限りません。シェリルの最愛の夫だったデイブ・ゴールドバーグさんは、47歳の若さで急死してしまいました。『LEAN IN』の出版から2年後のことです。

デイブ・ゴールドバーグさん出典:Dave Goldberg | Wikipedia

2年後にデイブさんが亡くなることがわかっていて、その運命が決まっていたとしたら―。シェリルは他の大きな仕事はひとまず捨て、デイブさんと最後の2年間を一緒に過ごすことを選んだでしょう。

どうでもいい旦那さんなら別ですが、シェリルにとっては最愛の旦那さんだったからです。デイブさんがシェリルにとって大切な人であったことは、あとがきの下の言葉でもわかります。

デーブは私の最高の友で、いちばん近しい助言者で、熱心な親で、生涯の恋人である。(P.250)※デーブの表記は原文ママ

そして、シェリルは本の出版のために、デイブさんと過ごす時間を犠牲にしました。同じくあとがきで下のように書いています。

本を書くことになれば、二人で一緒に過ごす時間が犠牲になることを、私たちはよく承知していた。(P.250)

つまり、シェリルが「キャリアと幸せは両立できる」という本を書いている間、デイブさんとの最後の時間は、着々と削られていたということです。もちろん、シェリルを含めて誰も悪くないのですが、「すべての幸せを手に入れる」ことが、いかに難しいかをあらためて実感できるでしょう。

シェリルのレベルまで行かなければ、キャリアと幸せを両立させることは、おそらくできるでしょう。

  • そもそも、自分にとってキャリアとは何か
  • 幸せとは何か

この定義次第で、今この瞬間に両立できることもあれば、永遠に両立できないこともあるでしょう。「AとBは両立できる」と考えるとき、

  • Aとは何か
  • Bとは何か

の定義も当然必要なのです。実は、これが意外に抜け落ちています。もしかしたら、私たちにとっての幸せは「命以外にない」かもしれないためです。

(命以外の幸せを感じることも確かにあるでしょうが、その幸せを拷問にかけられても守ろうとするでしょうか)

シェリルは、ザッカーバーグが本書の紹介文で書いているとおり「正直な女性」です。「キャリアと幸せは両立できる」という彼女の考え方に嘘や偽りはなく、実際に両立できるでしょう。

ただ、両立の前に「定義」が必要なのです。つまり、キャリアと幸せ(具体例でいえば家庭)の両立に悩んだとき、私たちがすべきことは、

  • 方法を考える(枝葉)
  • 定義を考える(根本)

の2つなのです。枝葉と根本の両方があって木が成り立つため、どちらも必要です。仕事を効率的にすすめるノウハウを学びつつも、「幸せとは何か」という一見ポエムのような問いかけに対し、答えを出す必要があります。

  • 学者のような考察と、
  • 冒険家のような実体験

この二つを持って、

「これが私の答えである。人に押し付けることもないし、誰からも押し付けられることのない、私の答えである」

と、自信を持っていえるような答えを出す必要があります。『LEAN IN』も、成功者が説く「ありがたい教え」ではなく、シェリルという女性が出した「私の答え」の一つです。

まとめ

『LEAN IN』の考え方には反発する人も多く、『LEAN OUT』というアンサー本も出版され、「リーン・インVS.リーン・アウト論争」も起こりました。

【参考】『リーン・イン』は女をさらに不幸にした!|サンドバーグが女性にもたらしたのは「新たな格差」だった | クーリエ・ジャポン

デイブさんの急死を見ると、リーン・アウトの考えも決して間違ってはいないでしょう。どちらの考えにしても「両方の考え方を知った上で、自分にどちらが合っているかを考える」ことは重要です。両方知らなければ、選ぶことなどできないでしょう。

そのため、シェリルの考えに共鳴する人にも、逆に違和感を覚える人にとっても、『LEAN IN』はヒントになるといえます。「キャリアと幸せの両立」に答えを出したい女性・男性は、同書をその参考の一つにしてみてはいかがでしょうか。

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