脳の力を最大化するのに必要なのは「集中力」ではありませんでした。
非集中の状態になると扁桃体の活性化が抑えられ、心がリラックスる。全当局が活性化し、想像力が高まる。前島の活動が高まり、自己認識が強化される。「楔前部(けつげんぶ)」と呼ばれる脳の部分(人間を自意識過剰にする「観察自我」)の影響を制限する。(これはつまり、先ほどかあ言っているヴァイオリニストやテニス選手のフル・パフォーマンスを発揮する能力だ)。前頭葉前皮質の活動を取り戻し、思考をフル回転させ、疲労を抑制する。長期記憶を向上させ、重要な経験を引き出せるようにする。
(「はじめに」13ページより)
今回紹介する本書『究極の思考法』(著 スリニ・ピレイ,訳 千葉敏生)は、著者が「非集中回路」と呼んでいる「デフォルト・モード・ネットワーク」(DMN)を主とした「脳の使い方」を最大化させる方法について書かれている。つまり、脳科学的に証明された「思考方法」の本ということです。
脳科学により脳の力を最大限に発揮する方法
(「図で考える。シンプルになる」の図解術をもとに作った『最強の読み方』の図解メモ)
非集中の力で「脳のリズム」を作り出す
あなたの思考の道具箱のなかにある唯一の道具が、「集中」だけだとしたら、あなたはすぐに疲れ、脳はあっという間に停止してしまう。これは最高の状態とは程遠い。脳がクラッシュする前に防ぐほうがいいに決まっている。自覚があるかどうかは別として、二元の脳は1日の半分近く、目の前の作業から意識をふっと遠ざける小さな心の旅を繰り返していることが研究でわかっている。しかし、定期的に心をさまよわせるのではなく、気まぐれで心をさまよわせるのでは、クラッシュするまで脳を酷使し続けるのと同じくらい、脳の潜在的な能力がムダになってしまう。
(5ページより)
著者いわく、脳は「集中」と「非集中」によりオン・オフのリズムがある。
この「集中」と「非集中」の連携によって、脳は絶命妙なバランスとる必要があるということです。
非集中にまつわる「休憩の取り方」
集中と非集中の2つを活用することで得られる6つのメリット
- 気が散るのを防ぐ。
- 頭を柔らかくする。
- あなたを自分自身や他者とより深く結びつける。
- 過去、現在、未来を統合する。
- 創造性を発揮するのに役立つ。
- 漠然とした記憶を掘り起こす。
「非集中」の妨げとなる4つの要因
習慣
決まった行動を続けるのが一番楽なため、脳は現状維持を好む。集中して生産性を上げることに慣れきってしまうと、脳はその習慣を変えることを拒絶するようになるということ。集中に慣れきった理性的な脳にとっては、非集中はナンセンスでしかないのです。
不安
不安があると脳は動揺し、世界観を歪めてしまう。この事実を理解していれば不必要に怖がることはなくなる。非集中を活かしてこの偏りを修正することが対策の第一歩。
集中依存
集中しすぎると、疲労困憊し、視野が狭くなり、頭がボーッとする。一方で、非集中のスイッチをオンにすれば、脳に回復を与え、リフレッシュした状態で集中モードへと戻ることができる。
集中への回帰
脳を非集中モードにし、たっぷりと休暇を取ってエネルギーを補充すると、脳は再び過集中の状態に逆戻りしようとする。集中と非集中のバランスを保つように心がける必要がある。
脳を「非集中モード」にできる7つの習慣
夢想
自分自身の自由な考え、空想的、仮想的、または架空の物事について思いつくまま誰かに話しているとき、夢想をしている。夢想は精神分析で広く用いられる非集中のひとつの形式だが、日常生活でも使える。エンジニアや起業家は影響が少ない発明の初期段階で、同僚、投資家、支持者などを自身の戦略的思考へ引き込むため、夢想をより本格的で実践的に用いている。
物思い
物思いは、夢想よりも明確な非集中の形であり、行動を豊かにする具体的な記憶と抽象的な記憶の両方を掘り起こすのに役立つ。
想像
未来の出来事やその対処法について次々と突拍子もない仮説を立てていく行為は、遊び心にあふれた想像力の使い方でありDMNを活性化させることが証明されている。
空想
非集中モードに切り替える上で極めて重要なツール。空想の仕方に方法はなく、人それぞれのやり方がある。
独り言
DMNを活性化させる戦略の中で、自分の脳に語りかける行動はストレスを緩和するための戦略として有効性が明らかになっている。二人称で自身のことを「君」または「名前」で呼ぶ方が、単に独り言を言うよりも効果的。
身体を使う
身体を使うと認知のリズムが活性化する。空想と同じく非集中のスイッチを入れるのは人それぞれ。創造力をアップさせる身体の使い方もいくつかある。
瞑想
さまざまな形式の瞑想があるが、瞑想は行き詰まりを抜け出し、学習効率を高め、集中するだけでは抜け出せない偉大な一面を発揮できるようになる。
本書ではより具体的な内容とともに、次章は『創造性を上げる力』『学習効果を上げる力』『生産性をあげる「落書き」について』『心を整える「いじくり回し」』『自分を超え続ける「非集中」の力』で構成される。
科学的根拠のもとに書かれた本書。より脳の力を開放するために、「集中」と「非集中」の活用は必須であると言えます。
本記事で使用するために作成した図解術の考え方については、こちらの記事にて紹介しております。