今回ご紹介する本書「仕事の説明書〜あなたは今どんなゲームをしているのか〜(土日出版)」は簡潔にまとめると、「『自分の携わっている仕事は何か』を深堀りすると仕事への理解が深まって、全てゲーム化できる」というものです。
著者の田宮直人・西山悠太郎らが、仕事をゲームのように楽しめるようになった仕事の知識習得術。
これは「作業手順書だけでは見えてこない多岐に渡る仕事の知識を総合的に身につけることができる技術」です。
ゲームは楽しくていくらでもできます。一方で、仕事が楽しくていくらでもできるという人はそう多くありません。
ゲームの楽しさが仕事に適用されると、人間関係や作業といった仕事につきまとう悩みの種がすべてゲームに登場するボスキャラやクエストのように感じられるようになってきます。
ボスは倒せば良いですし、クエストも次にやるべきことが示されています。つまり、問題が発生しても「次に何を行うべきなのか」を明確にすることができるのです。
一方で仕事をしていても次に何をするべきなのかあやふやで苦しく、時の流れを遅く感じてしまう場合があります。
著者の田宮直人・西山悠太郎はそれらを比較した結果、「作業手順は教わっているが仕事については教わっていない」という点が仕事を楽しくない(時間が過ぎることを願う)ものにしているという結論に至っています。
ゲームのルールを知ることが大事だ。そしてルールを学んだあとは、誰よりも上手にプレイするだけだ。
by. アルベルト・アインシュタイン
引用:本書8-8「仕事というゲーム」より
- 仕事の説明書を作成する
- 仕事の目的は問題解決
- ビジネスというゲームを紐解く
- 数値化・言語化によりビジネスの解像度を上げる
- データからアクションを導出する
- 競合や顧客を意識して戦略を立てる
- 仕事を前に進める
- 仕事を楽しみながら、キャリアアップする
仕事の説明書を作成する
ゲームとはつまるところ遊びのひとつです。遊びは楽しくていくらでも没頭していたいですが、仕事はそうではありません。
仕事を遊びのように楽しいものにするためにはまず、「仕事とは何か」「遊びとは何か」「仕事と遊びの違いは何か」を知る必要があります。
遊びやゲームは楽しめるのに仕事になるとモチベーションが下がり、楽しくなくなるのには理由がある。その理由を解明することで、仕事を楽しむ方法や学ぶべき知識が明らかになるはずだ。
引用:本書8−8「仕事と遊びの違い」より
本章の構成
- 仕事に熱中できない社会人生活
- 仕事と遊びの違い
- 仕事が目指すところ
- 問題が解決に至らない理由
- 様々な知識を1つに束ね、フル活用する
仕事の目的は問題解決
問題を解決するために世の中の仕事は存在しますが、実際の現場においては解決してない問題が数多く積まれています。それは問題の定義が不十分なため問題の解決策が的確でない状態と考えられます。
- なぜ問題は解決しないのか
- 重要なのは問題解決ではなく問題定義
- 問題を切り分ける時に重要なMECE
- 原因を深堀りするロジックツリー
- 解決策を導出するイシューツリー
- 問題を分解する4つの切り口
- 論理展開の3つの基本
問題解決をするためにすぐに行動することはできますが、現状と理想を定義しなければ問題を見極めることはできません。見極めを行わない限り問題に対する直接的な解決には至りません。筆者は問題を適切に定義するために3つのフレームワーク「問題定義」「ロジックツリー」「イシューツリー」をこの章で紹介しています。
ビジネスというゲームを紐解く
実際のビジネスを前に進めるためには世の中の会社が行なっているビジネスというゲームそのものを知る必要があります。ビジネスとゲームは「問題解決する」という点において近しいものであるため、しばしば本書ではビジネスとゲームを結び付けて話が進められていきます。ビジネスについての理解を深めていくことで問題定義・問題解決の質を向上させることにもつながると言えます。
- ビジネスとは何か?〜顧客・競合・自社ですべてが定義される〜
- 3C分析を深める様々なツール
- ヒト・モノ・カネで考える
- 商品やサービスを細分化して考える
- 効果的に市場を開拓する
- 顧客の状態に応じて適切な対応を行う
- 顧客の行動プロセスを明らかにする
自分の所属している会社を分析するフレームワークがあります。学生の方など、会社に所属していない方は親近感を覚える会社を選んで分析材料に使うと良いです(アルバイト先の会社・自分の好きな会社など)。
数値化・言語化によりビジネスの解像度を上げる
もしビジネスがどのようなルールで行われているかを把握し、問題定義も適切にできたとしても、それを具体的なアクションに起こそうとした時につまづいてしまうことがあります。その多くの理由は周囲にそのアクションの必要性を説明をすることができず説得をすることも協力を仰ぐこともできないからです。
- 数値化と言語化の必要性
- ラベルを用いて管理可能な状態にする
- 商品を重要度で分けて管理する
- 顧客を複数のグループに分けて管理する
- 顧客を複数の軸で分けて管理する
- ベン図を用いて管理する
言葉で言っても伝わらないことは数値化すると伝わります(例:マッチョになる→逆立ちしたまま腕立て伏せが30回できる人になる)。逆に数値化しても伝わらないことは言語化…ラベリングをしてみると伝わりやすくなります(週6日サービスを利用してくれるユーザを生み出す→ヘビーユーザーを生み出す)。相手に伝わりやすい言葉を用意することで説明が直感的かつ明確になるのです。さらに、数値化・言語化を通じて言葉やデータを定義することで管理がしやすくなります。
データからアクションを算出する
これまでに数値化し、言語化した現状(データ)をもとに次のアクションを定量的・客観的に導いていきます。そのためデータ分析をする必要がありますが、分析したデータをそのまま報告しても主張や根拠が分かりづらくて周囲の理解は得られないことが多いです。そのためデータ分析と同時にデータストーリーテリングの知識も身につけると効果的です。
- データ分析を行う重要性
- 指標を設定するための考え方
- 分析する軸を定義する
- 主張に応じたグラフを選択する
- 効果的に可視化する
- 定型化された分析手法
- 売上と費用に関する指標
- 4種類の分析アプローチ
データ分析手法を4つとりあげますが、どの分析にも共通していることがあります(違いが出るのは分析する目的が違い、さらには出したい結論が違うからです)。
データを…「大雑把に把握すること」「グラフにすること」「比較できるようにすること」「仮説検証ができること」です。この4つの共通点を意識することで仮説や次のアクションなどが浮かび上がっていきます。
競合や顧客を意識して戦略を立てる
フレームワークや分析を利用して見えてきたことを基に戦略を立てます。戦略の立て方を説明するためにマーケティング用語が頻出するため、自分の行なっているビジネスがどんなルールのゲームで、どうすれば攻略できるのかを考えることになります。
- リスクとリターンを意識する
- 現状の立ち位置を理解する
- 状況に応じた戦略を立てる
- 競合から顧客を守る
- 立ち向かうべき課題が適切か確認する
- 質と量の観点で改善を検討する
- ゲームの順番を意識する
- 顧客の流れを意識する
- 別の領域から着想を得る
戦略を立てる上で自社の他に、競合他社と顧客の存在を忘れることはできません。競合他社との関係性を把握し、どのように戦うべきかを検討することで戦略が見えてきます。技術力や企画力を活かして仕事をしている方々も自社・他社の戦略を理解し、その改善案を考えることができれば仕事がもっと楽で楽しいものになり得ます。この章では「ビジネスを改善したいけど相手への伝え方がわからない…」という人のために説得の方法についても言及しています。
仕事を前に進める
今まで考えてきたことを行動に移すためには「チームの協力」、「ある程度失敗の許容される環境」、そして「裁量権」が欠かせません(これら3つを兼ね備えて「自由意思がある」と言える)。これらを獲得するための心構えと準備を進めていきます。
- 仕事を前に進める心構え
- 失敗が許される環境作り
- 周りを巻き込む
- 30秒で説明する
- 視覚で訴える
- 許可を得よう
- 失敗から学び、再度挑戦する
- 仕事のゴールを意識する
1章から6章までの知識を身につけて「自分は本気である」という姿勢をアピールできるようになることで周囲の説得を進められるようになります。ビジネスというゲームのプレイヤーになるために1つずつ準備していきましょう。
仕事を楽しみながら、キャリアアップする
ここまで述べてきたこと全てを実行するためには根気が必要です。また、仕事をゲームとして楽しむためにも高いモチベーションを維持し続けるに越したことはありません。最終章である第8章ではモチベーションに関する理論や筆者が実践していることについて紹介されます。
- ビジネスを遊び場として変化させる
- 情報のフィードバックを大切にする
- 他人を驚かせる仕事をする
- ルールを柔軟に変更する
- 成長できる環境に身を置く
- 目標を正しく理解し行動に繋げる
- 自分の未来を定義する
- 初めはみんな下手だった
- 定義する重要性を再確認する
筆者は本書を通じて以下のことを訴えようとしていました。
定義できないものは、管理できない。
管理できないものは、測定できない。
測定できないものは、改善できない。
引用:本書8−9「定義する重要性を再確認する」より
逆説的に「定義できるものは改善できる」ということを主張したかったようです。
今回、仕事と遊びの定義から始まった本書。
私は仕事も遊びも今より更に楽しいものにできると信じて「仕事の説明書」を作成していきます。
本書は仕事をゲーム化するために難易度の高いワークを我々に課してきます。しかしその先に待っている人生は24時間ゲーム三昧(仕事がゲームのように楽しい)生活です。説明書作りもまた、やりがいのあるゲームだと思いませんか?