独学が勝つ!知的戦闘力を上げる「独学の戦略」とは?

一般的に必要科目であるとされる、「マーケティング」や「経営学」、あるいは「組織論」や「心理学」について、『独学の技法』の著者である山口周さんは学校で正式に学んだことは、実は一度もありません。つまり、すべて独学です。

それに関わらず、大手広告代理店や外資系戦略コンサルティングファーム、外資系アドバイザリーファームで働けたのは、ひとえに独学のおかげだと述べています。

なぜなら、独学により知的戦闘力を養う技術体系を見に付けたからでした。

今回ご紹介する『独学の技術』では、著者が仕事人生を通じて構築した「独学の技術体系」についての解説本です。

本書の構成

  • 知的戦闘力をどう上げるか?
  • 戦う武器をどう集めるか? [戦略]
  • 生産性の高いインプットの技法 [インプット]
  • 知識を使える武器に変える [抽象化・構造化]
  • 創造性を高める知的生産システム [ストック]
  • 戦闘力を高めるリベラル・アーツの11ジャンルと99冊
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独学を「システム」として捉える

著者の山口さんは、独学というのは大きく分けて4つのモジュールからなるシステムと考えいます。

  • 戦略
  • インプット
  • 抽象化・構造化
  • ストック

一般的な「独学術」の多くは、「独学システム」における「インプット」しか扱われていません。

しかし、独学の目的を「知的戦闘力の向上」に置くのであれば、独学をシステム全体として捉える考え方が必要になります。

「インプット」によって知識量が増えても、自分の中に体系として落とし込む「抽象化・構造化」ができなければ、状況に応じて過去の時rを適用するような柔軟な知識の運用は難しい。

インプットされた情報のほとんど、感覚的には9割以上は忘却されることになります。「いかに忘却を防ぐか」を考えても仕方ありません。知的戦闘力の向上を図ろうとすれば、むしろ「インプットされた内容の9割は短期間に忘却される」ことを前提にしながら、いかに文脈・状況に応じて適切に忘れてしまった過去のインプットを引き出して活用できるかがカギなのです。

(「はじめに」より 6ページ)

いかにしてインプットするかという点にばかりフォーカスしても意味がありません。

イノベーションにおける知識の価値があらゆる分野で急速に下がる現在。
固定的な知識を獲得するための独学法は負担が大きいだけだからです。

なぜなら、インプットされた知識の多くは短いあいだに「知識としての旬」を過ぎてしまうから。
これから重要になってくるのは、独学を「動的なシステム」として捉えこと。

「知識ではなく知能」。

つまり、徹底的に「知的戦闘力を高める」という目的に照らし合わせることです。

目指すのは「覚えること」ではない。

独学を動的なシステムとして捉えるということは、必然的に「覚えること」を目指さないという結論に行き着くといいます。

多くの人は、「高い知的戦闘力」をそのまま、「膨大な知識量=知的ストック」と考えがちです。
しかし、一方で「覚える」ということはインプットした情報を固定的に死蔵(しぞう)させるというということでもあるというのです。

現在のように変化の激しい時代であれば、インプットされた知識の多くが極めて短い期間で陳腐化するため、効用を失うことを前提にして独学のシステムを組むこと。この上で、カギとなるのは「脳の外部化」。一度インプットした情報を自分なりに中初夏。構造化した上で、外部のデジタル情報として整理しストックするというのです。

つまり、いったん脳にインプットした情報は、エッセンス(※)だけを汲み取る形で丸ごと外に出してしまうわけです。汲み取ったエッセンスをストックする場所はフリーアクセス可能な外部デジタルストレージであり、脳のパフォーマンスは、あくまでもインプットされた情報の抽象化・構造化にフォーカスさせます。そうすることで「覚えること」に時間をかけずに、知的戦闘力を向上させることが可能になるわけです。

(「はじめに」より 9ページ)

※エッセンス:物事の本質。真髄。

いま「独学」が必要とされる4つの理由

著者は、「独学の技術」がこれほどまでに求められている時代はない、と述べています。その理由として上げているキーワードが、「知識の不良資産化」「産業蒸発の時代」「人生三毛作」「クロスオーバー人材」

それぞれについて確認していきます。

1.「知識の不良資産化」ーー学校で学んだ知識は急速に時代遅れになる

わかりやすく言えば、学んだ知識が富を生み出す期間がどんどん短くなってきているということ。

その例として、筆者はビジネススクールで教えているマーケティングを引き合いに出しています。ほんの10年程度前まで、ビジネススクールで教えているのはフィリップ・コトラーを始祖とする古典的なマーケティングのフレームワークでした。市場を分析して、セグメントに分け、ターゲットとなる層に合わせてポジショニングを決め、4Pを確定するというアプローチです。

ところが今日、こういったフレームワークはものすごい勢いで時代遅れになってきているとのこと。

昔であれば、一度学校に通って習い覚えた知識は、プロフェッショナルの知的生産を障害にわたって支える大きな武器でした。ところが、現代においてはこういった知識の「旬」が、どんどん短くなっているのです。

だとすれば求められるのは、過去に学んだ知識をどんどん償却しつつ、新しい知識を仕入れていくという「型」になります。そのため、「独学の技術」が重要性を増すというわけです。

2.「産業蒸発の時代」ーーイノベーションはいま仕組みを根底から覆す

今日、多くの産業・企業において「イノベーション」が最重要な課題。

そして、多くの企業が目標としてイノベーションを掲げると、多くの領域で「産業の蒸発」という事態に帰結するということです。

イノベーションとは、それまでの価値提供の仕組みを根底から覆すような変革をこと。つまり、イノベーション発生以前にビジネスを行っていた企業が、その領域でのビジネスを根こそぎ奪われて、いわば蒸発して消滅するような事態が発生するということです。

典型的なのがアップルによるスマートフォン市場への参入。最初のスマートフォンであるiPhoneというイノベーションを成し遂げたのが2008年、数年後には末端価格換算で3〜4兆円にもなる市場のほぼ半分を奪うことになりました。その結果、シャープ、富士通、は大幅にシェアを下落、パナソニック、東芝、NECは携帯電話市場からの撤退を余儀なくされたのです。

いわゆるガラケーからスマートフォンへの急激なシフトが発生した結果、ガラケーという巨大な産業はたった数年の間に、いわば「蒸発」してしまったということです。

イノベーションの実現によって、さまざまな領域でこのように急激な産業構造の変化が引き起こされることを考えれば、そこに携わる多くの人々は、望むか望まないに関わらず、自分の専門領域やキャリアドメインを変更していくことを余儀なくされます。その際、「独学の技術」を身に着けている人とそうでない人に差が生まれるのは当然のことであるわけです。

3.「人生三毛作」ーー労働時間は長くなるのに企業の「旬の寿命」は短くなる

今日、キャリアを考えるためにあたって大変重要な2つの変化が起きている、と著者は次の2つに注目しています。

1つ目の変化は「現役年齢の延長」です。
ロンドン大学のリンダ・グラットンは著書「LIFE SHFIT(ライフ・シフト)」の中で、寿命が100年になる時代には、現役年齢もそれに相応して長くなり、これまで60歳前後だった引退年齢が70〜80歳になることで、私たちの現役期間が長期化することを指摘しているということです。

2つ目の変化は、企業や事業の「旬の寿命」が短くなっている、ということです。
重要なのは純粋な意味での寿命、つまり単に「倒産していない」ということではなく、活力を維持して社会的な存在感を示している時間がどれくらい継続しているかという点、つまり「旬の寿命」が短くなってきているということです。

企業や事業の「旬の期間」が短縮化する一方で、私たちの障害における労働期間は長期化する傾向にあるということです。
それはつまり、今後のビジネスパーソンの多くは、仕事人生の中で大きなドメインの変更を体験することを示しています。

4.「クロスオーバー人材」ーー二つの領域を横断・統合できる知識が必要となる

「クロスオーバー人材」とは、平たく言うと「領域を越境する人」です。

様々な専門領域が密接に関わり合うようになってきている現代において、専門性だけを頼りにしている人材のみで構成されたチームではイノベーションを起こすことは不可能。なぜなら、イノベーションというのは「新しい結合」によって成し遂げられるからです。

この「新しい結合」を成し遂げるためには、それまでに異質のものと考えられていた2つの領域を横断し、これを繋げていく人材が必要になります。これが「クロスオーバー人材」だということです。

「さまざまな領域にわたる広い知識」は、独学によって身につけるしかありません。

現在の高等教育機関のほとんどは、基本的に「専門家の育成」を前提にカリキュラムを組んでいるため、世の仕組みが領域を越境する人材を生み出すようになっていないということです。だからこそ、広範な領域に関する知見を得ようとするならば、独学以外に頼るすべはない、ということ。


こうした根拠に基づき、以後の本編では独学をシステムとして捉えた「戦略」「インプット」「抽象化・構造化」「ストック」について1章ごとに深掘りして説明しています。

ビジネスに活用する以外にも、自頭を鍛える手段として活用してみてはいかがでしょうか?

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