「最近、仕事に集中できない…」
「いつも不安にかられている…」
「長時間働いているのに、全然成果が上がらない…」
このような悩みを抱えているビジネスパーソンの方は多いでしょう。こうした悩みを抱えていると「脳が衰え始めているのでは?」と不安になるかもしれません。
脳は筋肉と同じで、間違った習慣を身につければ、簡単に衰えるものです。逆に、正しい習慣を身につければ、別人のように成長する臓器でもあります。
今回紹介する『脳を鍛えるには運動しかない!』を読むと、脳にとって間違った習慣の代表は「運動不足」であることがわかります。逆に、運動をすることで、脳がどれだけ飛躍的に成長するかもわかります(薬物依存症すら、運動で克服できるほどです)。
この記事では、本書で特に重要な内容を整理し、要約します。「脳を鍛える習慣を身につけて、パフォーマンスを上げたい」と考えているビジネスパーソンの方には、きっと役立てていただけるでしょう。
脳を鍛える習慣は「運動」が最強~6つのメリット~
運動を習慣とすることで、脳は次のどのように「鍛えられる」のか―。運動によって脳に起こるメリットは次の6つで解説されています。
- 学習能力の向上
- ストレス・不安の軽減
- うつの予防
- 注意散漫(ADHD)の改善
- 依存症の克服
- 加齢・認知症の予防
運動習慣で脳が鍛えられる、2つの科学的な理由
運動習慣によって脳が鍛えられる科学的な理由は、主に次の2つになります。
- 脳細胞の成長を促進
- 神経伝達物質が分泌されパフォーマンス向上
脳細胞の成長を促進
「脳の回路はニューロンのつながりである」ということは、知っている人も多いでしょう。ニューロンは「神経細胞」ですが、その材料となるのが「幹細胞」です。
(幹細胞は「何にでもなれる細胞」なので、再生医療の主役になっています)
つまり、ニューロンを増やすには、材料となる「幹細胞」が多いほどいいのです。運動によって脳内の幹細胞が劇的に増えることは、カリフォルニアのソーク研究所の神経学者、フレッド・ケージによって1998年に示されました。
ケージの実験では、毎日4~5km走ったマウスと、走らなかったマウスで、脳内の幹細胞の量に2倍の違いが見られました。本書では、他にも多数の「運動によって脳細胞が増える実験データ』が示されています。
神経伝達物質が分泌されパフォーマンス向上
ニューロンは「神経回路」です。回路ということは、機械の回路と同じく「ただのルート」です。
そのルートの中を「電気信号」が走って初めて、回路は機能します。この「電気信号」に当たるのが「神経伝達物質」です。
運動は、特に下のような神経伝達物質を増やします。
- セロトニン
- ノルアドレナリン
- ドーパミン
これらはいずれも精神を安定させ、集中力を高めるものです。運動によって増えた回路に、これらの物質が潤沢に走ることで、脳のパフォーマンスが向上します。
運動習慣が脳に必要なのは、人間の脳が「食べ物を探す運動とセット」で発達したため
なぜ運動だけで脳にそれほどの効果が出るのか?
人間が頭脳労働をするようになったのは、農耕が始まってからの1万年程度です。その前の200万年の狩猟採集時代は、肉体労働しかしていませんでした。
その時代にも人間の脳は少しずつ発達したのですが、その発達は「常に運動とセット」でした。
- 歩き回って「木の実の多い森」を記憶する
- 槍を投げて「よく飛ぶ角度」を学習する
- 鹿の群れに匍匐前進で近づきながら「動物の行動パターン」を学習する
このように、原始人も多くの「情報を記憶」しています。しかし、その記憶は常に運動しながら得ているものなのです。
狩猟採集時代の200万年の学習パターンで脳は固定されている
農耕開始後の1万年より、狩猟採集時代の200万年の方が「200倍長い」のです。このため、人間の脳はまだ「運動して、その結果から学習するパターン」で固定されています(一部の突然変異した人以外)。
脳が学習する仕組みがそのように固定されているため「学習したければ、まず運動すべき」なのです。
デスクワークの効率向上のため、あえて先に運動する
本書で症状が改善した患者の多くは「運動をほとんどしていなかった」人たちです。その理由として最も多かったのが「忙しかったから」です。
本書に書かれているような内容を説明して、レイティが説得しようとしても「でも忙しいし…」と、最初は難色を示す患者さんが多くいました。あなたも今、同じ気分かもしれません。
ただ、そのように当初運動を拒否していた人でも、少しずつ始めてみると「運動をした日の方が、短時間で効率よく仕事をこなせている」ことに気づき、本格的な運動に取り組んでいます。
あなたが「脳を鍛える習慣」を探していたり、「運動が一番」という言葉に関心をもったのは、「体が本能的にそう感じているから」という可能性が高いでしょう。本書に登場する患者さんたちも「騙されたように」運動を始め、結果人生が大きく好転しています。
あなたも試しに、「これだったら無理せず楽しんでできる」と思うような運動を、誰とも競わず結果も気にせずに、気軽に始めてみてはいかがでしょう。