自分を変える9つの方法~意志力を科学的に分析し、自動的に人生を変える~

「自分を変えたい」「意志の強い人間になりたい」というのは、誰もが思うことです。しかし、そう決意する度に挫折してしまうことも多いでしょう。

そのようなときに「自分は心が弱いのだ」と思ってしまうかもしれません。しかし、それは錯覚であり「本当に心が弱い人」というのはいないのです。

心や意志の力というのは、すべて「科学的な現象」です。その科学を知っていれば科学的に自分を変えることができるのです。

それを説いて、2013年を代表するビジネス本のベストセラーとなったのが『スタンフォードの自分を変える教室』です。同書は、スタンフォード大学の超人気講義を書籍化したものです。

今回はこの書籍を要約し、同書の図解版の図解を紹介しながら、「科学的に自分を変える方法」を説明していきます。意志力を科学的に高め、自分を自動的に変えたいと思っている人には、きっと役立てていただけるでしょう。

はじめに

まず、この本の各章のテーマを一言でいうと、下記の一覧のようになります。これが「科学的に自分を変える9つの方法」です。

  1. 脳を科学的に理解しよう
  2. 誘惑を科学的に回避しよう
  3. しっかり寝て、常に疲れないようにしよう
  4. 良いことをしたら悪いことをしたくなることを自覚しておこう
  5. ドーパミンの命令(欲求)を無視しよう
  6. 自己嫌悪でなく自己肯定をしよう
  7. 長期で考える癖をつけよう
  8. 自分が真似したい人の近くにいよう
  9. 禁止するより別のことをやろう

以下、それぞれの章の内容を要約し、9つのメッセージの意味を解説していきます。

【1章】意志力は科学である:3つの脳領域

1章図解

意志力は、まず下の3つの力に分類できます。

望む力自分のゴールを「求める」力(モチベーション)
やる力するべき努力を「する」力
やらない力すべきでないことを「しない」力

望む力がすべての根源で、やる力・やらない力は「目標を達成するための手段」といえます。この3つを合わせて「意志力」と呼びますが、いずれも脳の前頭前皮質という部分が司る力です。

そして、その前頭前皮質の中でも、3つの力のそれぞれで以下のように、司る領域が分かれています。

望む力前頭前皮質の「中央下」
やる力前頭前皮質の「上部左側」
やらない力前頭前皮質の「上部右側」

意志力とはこのように脳の各部の中に存在する科学的なものであることを、まず理解してください。

【2章】誘惑はただの現象である:原始以来の生存本能

2章図解

私たちはストレスを感じると、誘惑に負けやすくなります。これは「闘争・逃走反応」によるものです。

敵と戦う場合も逃げる場合も、瞬発的な力を出す必要があります。そのためにアドレナリンとセットで出るのがドーパミンです。

ドーパミンは体の感覚を鋭敏にするため、戦うのにも逃げるのにも役立ちます。しかし、厄介なことに「刺激に反応しやすくなる」という性質もあります。

たとえば、目に入る食べ物を「すぐに食べたくなってしまう」などです。これは、原始時代に「戦っているとき」は正しかったわけです。

「獲物を見つけたら素早く殺して食べる」というのが、生きるために必要だったわけですね。しかし、現代で同じ反応をするとまずいのです。

現代では食べ物が至るところに転がっているため「原始人モード」で食欲を感じると、すぐに太ってしまいます。そのため、ストレスを感じたときに「闘争・逃走反応を起こしてはいけない」のです。

このことを学習した理性的な脳は、「休止・計画反応」を起こします。ドーパミンを「出すのではく、抑える」反応です。

この2つの反応を知っていれば、誘惑に打ち勝つことがたやすくなります。誘惑に反応する本能は原始人が生きるために必要だったものであり、ただの機械的な現象なのです。

自分が本当に望んだわけではなく、ただの電気信号が脳で自動的に発生しているのだと考えれば、誘惑に打ち勝ちやすくなるでしょう。

【3章】疲れてはいけない:自制心にはスタミナがある

3章図解

内臓が一日にこなせる仕事量には限界があります。これは脳も同じで、脳の「スタミナ」があるうちは、自制心も高くなります。

このことは、フロリダ州立大学の心理学者ロイ・バウマイスターが最初に本格的な実験を行い、発見しました。氏は15年に渡り、あらゆる状況で人々が「どれだけ自制心を発揮できるか」を調査したのです。

結果、どんなケースでも「自制心は時間の経過とともに低下していく」ことがわかりました。「大事なメールは朝一番で出すべき」といわれるのも、自制心が高い状態で、冷静なコミュニケーションを取りやすいためです。

【4章】良いことをした後が危ない:モラル・ライセンシング

4章図解

モラル・ライセンシングは心理学の用語で「良いことをすると悪いことをしたくなる」行動原理を指します。本書では一例として、プリンストン大学の心理学者であるブノワ・モナンと、デイル・ミラーの実験を紹介しています。

詳細は本書に譲りますが、その実験では下のような結果が出ました。

1つ目の質問で差別に反対する回答をした学生ほど、2つ目の質問で差別を肯定する回答をした

私たちが「自分より下」と思っている人(勘違いなのですが)を見下すことは、一種の快感です。それによって「自分の地位が上がった」という錯覚を覚えるためです。

このような理由から「差別に快感を覚える」人は一定数存在し、その人たちの本性が、モラル・ライセンシングによって現れたということです。

【5章】欲求の充足と幸せは違う:ドーパミンが起こす錯覚

3章図解

脳には報酬系という部分があります。ここは、食べ物や性行為などの「報酬」が手に入りそうだと認識すると、ドーパミンを放出します。

ドーパミンは全ての感覚を動員し、その報酬を「手に入れろ」と全身に命令を出します。食べたりセックスをしたりすることは、動物が命をつなぐために必要だったからです。

重要な機能ではありますが、ドーパミンが「出過ぎる」ことは危険です。上の図解のラットのように、健康を害してでも報酬を求め続けてしまうためです。

上の図では「脳への電気ショック」が報酬です。私たちの生活では、食べ物・ポルノ・SNSでの称賛などが、報酬に当たります。

報酬が過剰にちらついていると、それに反応してドーパミンが出過ぎてしまうのです。幸福とはこのドーパミンの欲求を満たすことではなく、「不自然なドーパミンの放出を抑える」ことです。

【6章】自己嫌悪は悪循環:どうにでもなれ効果

6章図解

「どうにでもなれ効果」は、ダイエット研究者のジャネット・ポリヴィとピーター・ハーマンが命名したものです。人が失敗した時、自暴自棄になってさらに失敗する行動を繰り返すという現象を指します。

この現象が起こる科学的な理由は下のものです。

  1. 失敗してストレスを感じる
  2. ストレスを感じると、動物の脳はドーパミンが出る
  3. ドーパミンの影響で、手近に入る報酬を魅力的に感じてしまう

ストレスを感じるとドーパミンが出る理由は「生物の世界でストレスを感じるのは、敵が現れた時」という点にあります。敵と戦ったり、素早く逃げたりするために、ドーパミンが必要なんですね。

しかし、現代では猛獣のような敵がいるわけではありません。行き場をなくしたドーパミンは「すぐに手に入る報酬」に体を誘導し、体が欲求に負けてしまうということです。

【7章】脳は短期の成果を求める:遅延による価値割引

7章図解

人間や動物の脳は、目先の報酬に強く反応します。そして、人間は状況によって「動物よりも目先の欲望に負けやすい」ことがわかっています。

上の図解の実験は、2007年にハーバード大学とドイツのマックス・プランツ研究所が合同で行ったものです。

  • 今すぐおやつを食べると、2個しかもらえない
  • 2分待てば、6個もらえる

上の条件でチンパンジーと人間を比較したとき、以下のように予想外の結果が出ました。

  • チンパンジーは72%が、2分待った
  • 人間は19%の人しか、2分待てなかった

忍耐力で人間がチンパンジーに惨敗したわけですね。この原因はチンパンジーと違い、人間は言い訳を考えるためです。

「お菓子6個くらい、また自分で買えばいいか」と、すぐに食欲を満たすことを優先したわけですね。一方、チンパンジーはそうした「別の手段」を考えられないため、じっと2分待ったのです。

「手に入れるのに時間がかかる報酬は価値が下がる」という法則を「遅延による価値割引」といいます。人間はそれに加えて「脳を駆使した言い訳」ができるため、状況によっては動物よりも誘惑に負けやすくなるのです。

【8章】行動習慣は感染する:肥満が伝染る例

8章図解

ウイルスと同じく、行動習慣も感染します。特にアメリカで有名なのは「肥満が感染する」という事実です。

近しい人が肥満になると、自分も肥満になる確率が高くなります。近しい人の種類別に、下のような割合で増加します。

肥満になった人自分も肥満になる確率
友人171%増
姉妹(自分も女性)67%増
兄弟(自分も男性)45%増

普通の肥満になる確率が1倍とすると、友人が肥満になると「肥満リスクが2.71倍に上がる」ということです(姉妹なら1.67倍、兄弟なら1.45倍です)。

このように習慣は感染するため、

  1. できるだけ見習いたい人の近くにいる
  2. 人の良い所を見る
  3. 自分も人に良いところを見せる

ということが重要なのです。

【9章】禁止は逆効果:シロクマの実験

9章図解

「やるなと言われるとやりたくなる」という人間心理は、多くの実験で確かめられています。たとえば、1985年にダニエル・ウェグナーが行った「シロクマの実験」が好例です。

この実験でウェグナーは、17名の学生に「今から5分間、シロクマのことを考えないように」と指示を出しました。想像がつくかと思いますが、学生は全員シロクマのことを考えてしまいました。

「考えてはいけないと思うと、逆に考えてしまう」という効果を、ウェグナーは「皮肉なリバウンド効果」と呼んでいます。何かを考えないためには「別のことを考える」方がいいのです。


本書『スタンフォードの自分を変える教室』は、意志力を科学的に高め、自分を自動的に変えることについて説いた本です。

「自分を変えたい」と考えている方にとって役立つ考え方が掲載されています。

本書には、より深い内容について書かれいてますので、詳しく内容を知りたい方はぜひ読んでみてください。

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