努力してるのに成果がでない3つの原因とは?正しい努力の3ステップを解説!

努力不要論

「努力しているのに成果が出ない…」と悩んでいる人は多いでしょう。こう感じたときに多くの人が知りたいのは、下のような点かと思います。

今回はこの2点についての答えを、ベストセラー『努力不要論』の内容を紹介しつつ、まとめていきます。同書は現在もっとも注目されている脳科学者の一人・中野信子さん(写真)による著書です。

中野信子さん出典:脳科学者・中野信子が語る、“毒親”の捉え方と解決の糸口 | リアルサウンド

脳科学を元にした科学的なアプローチがなされているため、「努力が報われない原因」を正しく理解しやすくなります。そして、同じ労力でより多くの人の役に立てるようになり、自分自身の人生への満足度も高めることができるでしょう。

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プロローグ~間違った努力がいかに悪であるか~

努力する人を否定するのには勇気が要ります。努力を厭わない人は善良な人が多く、怠惰な人や狡猾な人よりは、明らかに良いものです。

ただ、その前提で書くと、本書が述べているように「間違った努力は悪」といえます。それがわかりやすい例として、本書は序盤で「東条英機の算術」を紹介しています。

東条英機の算術

努力によって「2+2=80」の成果を出そう、というメッセージです。確かに、斬新なイノベーションを起こせば、2+2=80の結果は出るでしょう。

しかし、そうした技術革新などの根拠がないなら、明らかに間違った考え方です。こうした極端な例を見ると「間違った努力をしてはいけない」ことが実感できるかと思います。

努力しているのに結果が出ない3つの原因

努力しているのに結果が出ない原因は下の3つです。

①:目標がずれている 本当に望むものを考えていない
②:戦略が間違っている 戦術レベルの努力だけしている
③:健康を犠牲にしている 判断力が落ちる

これは、本書の下の文をまとめたものです。

真の努力というのは本来、成果を出すために必要な①目的を設定する、②戦略を立てる、③実行するという3段階のプロセスを踏むことです。(P.42)

「努力している」のであれば、③はできているはずです。つまり、間違っているのは①、②の段階です。

そして「なぜ①と②が間違うのか」という原因の1つとして、本書では「健康を犠牲にすること」が説かれています。これも含めて「努力しているのに結果が出ない原因」を3つに分けて、説明していきます。

①:目標がずれている(本当に望むものを考えていない)

まず根本的な問題として「そもそもの目標がずれている」ことを、本書は指摘します。「本当に自分が望んでいるものをわかっていない」ということです。

少なくとも自分の気持ちに正直になれるまでは自分を見つめた方がいい。目標を重視することで、効率的に物事を処理できるようになるからです。(中略)そういう自己分析も、広義の努力のうちです。(P.167~168)

「本当に望むものを考える」というと、ポエムのように感じるかもしれません。しかし、この根本的な努力が大事なことは、拒食症で亡くなってしまった、カレン・カーペンター(カーペンターズのボーカル)を見てもわかります。

カレン・カーペンター出典:The Search for Karen Carpenter

拒食症になる前の彼女は、上の写真のように健康的で美しい外見でした。しかし、子供の頃に適正体重を8kg超えており、その時期に家族からかけられた言葉によって「絶対に痩せてやる!」と決意したそうです。

(伝記『 Little Girl Blue: The Life of Karen Carpenter』より)。

このとき、カレンは「痩せる」という目標を持ち、おそらく戦略も立てていたでしょう。そして、世界のトップ歌手になったほどの行動力で、それを文字どおり「死ぬほど」実行したわけです。

カレンは確かに痩せたかったかもしれません。しかし、それは「適正体重前後に減らす」までで良かったでしょう。

先ほどの写真を見れば、少なくとも現代の日本人なら「これがベスト」と思うはずです。それでも「もっと痩せなければ」と考え、そのための努力をしてしまったカレンは、下の画像のようにやせ細り、32歳の若さで亡くなってしまいました。

カレン・カーペンター出典:カレン・カーペンター ~母に引き裂かれたスーパースター~ | ELLE

このカレンの悲劇は、もちろん彼女の人生の価値を下げるものではありません。カレンはむしろこの悲劇によって長く愛され、惜しまれ続けるようになったともいえます。

石川啄木や尾崎豊の死のように、あえてスピリチュアルな見方をすると「芸術家として本当に欲しかったものを、実は手に入れた」のかもしれません。

ただ、亡くなってしまったということは、少なくとも現実世界に限ってみれば本当は望んでいないことを実行してしまったといえます。上の出典のELLEの記事にも書かれているとおり、カレンの本当の望みは、母親に好かれることでした。

そのために痩せようとしたことが「いつの間にか大変なことになってしまった」のですが、カレンのように行動力があって真面目な人ほど、こうした悲劇を引き起こしやすいのです。

先に紹介した本書の言葉「自分の気持ちに正直になれるまでは自分を見つめた方がいい」という言葉は、カレンの人生を見れば、決してポエムではないと実感できるかと思います。

②:戦略が間違っている(戦術レベルの努力だけしている)

本の中身

本当に望むものが見えていたら、次は正しい戦略を立てる必要があります。しかし、本書は「これもできていない人が多い」ことを指摘しています。

②の「戦略を立てる」がまったくできていません。そこを安易に考え、③(※実行)だけを一生懸命にやってしまっている状態です。
(中略)
目的に合った適切な戦略を立てられていない時点で負けなのです。残念ですが報われる可能性はゼロでしょう。(P.44)

太字部分は「努力しているのに結果が出ない」という、最も典型的なパターンといえるでしょう。

上の引用文は、少々言葉がきつく感じるかもしれません。背景を説明すると、この部分は「女性の婚活」について語っています。それも「高収入の男性と結婚して、専業主婦になりたい」という女性の婚活です。

この目的を達成するため、下のように考える女性はしばしばいます。

  • まず、高収入な男性との「出会いを増やす」ことが重要
  • そのために「自分も高収入な仕事に就く」ことが必要
  • そのために、東大に入ったり起業したりすることが必要

本書は、こうした努力を「間違っている」と指摘します。理由は、専業主婦を求める男性は、専業主婦に適したタイプの女性を好むためです。

  • 仕事や勉強はそこそこでいい
  • それより、料理を中心とした花嫁修業が必要
  • さらに外見を磨くことが必要
  • これらを、できるだけ若いうちにこなすことが必要

ということです。このような女性の生き方については、好き嫌いが分かれるでしょう。どちらの女性の生き方が正しいということはありません。

ただ、本書が指摘するのは「専業主婦になりたい」という目標があるなら「それに合った努力をすべき」ということです。上の引用文のとおり、「目的に合った」戦略でなければ、どれだけ緻密に立てても意味がないのです。

③:健康を犠牲にしている(判断力が落ちる)

ここまで書いた、①目標の設定と、②戦略の立案を正しくするには、判断力が必要です。健康を犠牲にすると、その判断力が鈍ります。本書は下のように指摘しています。

ストレスがたまるとか、睡眠不足、空腹である(血糖値が低い)、などの条件があると、人間の考える能力は低下することがわかっています。(P.56)

特にカレンを含む過酷なダイエットをしてしまう女性は「空腹である」ことが原因で、判断力が落ちている可能性があります。本書はこうした「判断ミス」をしないために、よく食べてよく寝る(健康的な生活を送る)ことを説いています。健康管理も「戦略の立て方の重要な要素」ということです。

正しい努力の3つのステップ

ここまでは「成果が出ない原因」をまとめてきました。これを「成果を出すためのステップ」とポジティブに言い換えると、下のようになります。

それぞれのステップについて、詳しく解説していきます。

①:本当に望むものを考える

「本当に望むもの」がわかっていない人は、実は先進国に多くいるものです。本書では、オーストラリアで緩和ケアに関わり、多くの患者の最期を看取った女性の気づきを、下のように紹介しています。

口にされた後悔の中で最も多かったものの1つが、「あんなに一生懸命働かなくてもよかった」なのだそうです。
仕事ばかりせず、もっと家族と一緒に過ごせばよかった、というのです。(P.222)

死ぬときに後悔すること25

このようなエピソードは『死ぬときに後悔すること25』などのベストセラーで多く紹介されているため、「聞いたことがある」と思う人が多いでしょう。同書では「あんなに働かなくてよかった」に関連して、下の6つの後悔が紹介されています。

  • 仕事ばかりで趣味に時間を割かなかったこと
  • 健康を大切にしなかったこと
  • 自分のやりたいことをやらなかったこと
  • 他人に優しくしなかったこと
  • 結婚をしなかったこと
  • 子供を育てなかったこと

さらに興味深い後悔として「治療の意味を見失ってしまったこと」があります。最期の瞬間まで「本当に望むものを考える」ことは難しいことが、この一文であらためてわかるでしょう。

②:計画を立てる

計画の立て方の具体例として、本書は「時間配分」に触れています。

1万時間というのは、1日5時間その勉強に費やすとして2000日。約5年半に相当します。(中略)毎日10時間なら3年経たずに達成できます。(P.50)

実は、本書がこうして時間配分に触れるのは合理的です。ドラッカーも計画の立て方について、下のように語っています。

ドラッカー

「仕事に関する助言というと、計画から始めなさいというものが多い。まことにもっともらしい。問題はそれではうまくいかないことにある。計画は紙の上に残り、やるつもりで終わる。成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする」(『経営者の条件』)

仕事からではなく時間からスタートする | ものつくり大学・上田惇生コラム

ドラッカーが「それではうまくいかない」と書いているように、時間配分を考えなければ、正しい計画は立てられないのです。当たり前のようですが、経営者でもそれができていない人が多いため、ドラッカーが『経営者の条件』という本に、これを書いているのです。

こうした時間配分も含めて、適切な計画を立てる「努力」が必要です。

③:実行する

望むものを見極めて、適切な計画を立てても、それを実行しなければ成果は出ません。そして、本書はその実行のために「意志力が必要」ということを説いています。

意志力とは目的や目標のためにタスクを地道にこなす、あるいはそのために自制したり我慢する力のことです。狭義の努力ではなく、戦略に基づいた努力をするには必要不可欠な要素です。(P.185)

ここまで来ると、一般的な日本人の「努力」のイメージに近づくかもしれません。この意志力ですが、やはり「科学的に」鍛えることができます。

『スタンフォードの自分を変える教室』

意志力を科学的に鍛える方法は、有名なベストセラー『スタンフォードの自分を変える教室』で説かれています。同書の内容も下の記事で要約しているため、ぜひ参考にしてみてください。

[st-card-ex url=”https://work-outer.com/lifehack/life-changing/”]

まとめ:「努力をしないための努力」をしよう

本書のメッセージを一言でまとめると、「努力をしないための努力をしよう」となります。下の一文のとおりです。

私は真の努力とは、「努力をしない努力」のことだと思っています。
努力信仰の人は、むやみに努力をしつづける快感に溺れ、「努力をしない努力」をしていない人がほとんどではないでしょうか。(P.213)

これは『孫子の兵法』も説いている内容です。同書は「戦う前から勝つ状態を、事前の外交や物資の調達などで築いておく」ことを説いています。現場での戦術については、実はほとんど書いていないのです。

『努力不要論』と同じ内容が実は紀元前から、誰もが知る有名な古典によって説かれていたということですね。「努力をしないための努力」は、古今東西で共通して重要なことなのです。

「努力しているのに成果が出ない」と悩んでいる人は、ぜひ本書を読んで「努力しない努力の方法」を学んでいただくといいでしょう。

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