『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(山口 拓朗著、日本実業出版社)の目的は、「何を書けばいいか分からない」や「文章がうまく書けない」という悩みを解決することです。
「うまく」「はやく」文章を書くために著者が重視することは2つ。
「アンテナを張って情報収集する」「読む人への貢献を意識して文章を書く」ことです。
第1章では、効率よく情報収集を行うための「アンテナの張り方」について、第2、第3章では、「あっち情報(周辺情報)」と「こっち情報(自分情報)」に分けて、情報収集のやり方をお伝えします。
第4章では「書く前の準備」について解説します。準備の仕方が変わるだけで、文章の完成度が大きく変わります。
第5章以降では、文章の書き方のノウハウを取り上げます。とくに、第5章で紹介する「文章フォーマット」は、文章の構成が苦手な人のための特効薬です。使いこなせば、書くスピードも飛躍的にアップするでしょう。第6章では、SNSで使える文章術をレクチャー。書き方だけではなく、書き手としてのマインドも変化するはずです。
第7章では、文章の完成度を高める推敲と修正方法を公開します。
正しい文法にも言及していますので、文章の基本を学びたい方は、どうぞ最後までお見逃し無く。(「はじめに」より)
文章の良し悪しは「情報整理」で決まる!
本書では、「うまい文章」=「目的を達成できる文章」と定義されています。
著者いわく、「何を書けばいいかわからない」人たちほど、「目的を達成する」という意識をもつだけで「書くべき情報」が手元に集まりやすくなるとのことです。
「うまい文章」ほど、その文章には明確な「目的」が隠されています。
「私が今この文章を書く目的は何だろうか?」と。その「問い」に答えをだすことが、「うまい文章」を書くための第一歩になります。
読む人に貢献する
文章は「書人」のためにあるのではなく、「読む人」のためにある、というのが著者の考えです。
すべての文章作成は「読者」、つまりは「読む人」の側からスタートします。
「読む人」の側からスタートすること、自然とその文章の目的が明確になってくるのです。
「書く人のためにある」といえる文章は、他人に読まれることを前提としてない日記くらいです。「読む人」のことを意識できるようになるだけで、文章は格段にうまくなります。
「アンテナ情報収集法」
文章を書くことが得意な人は、ふだんから上手にアンテナを張って、文章作成に必要な情報をどんどん吸い寄せているため、書くネタに困ることはありません。
著者いわく「アンテナを張る」とは、自分のなかに気付きをもたらす「問い」をもつこと。その問いを持つことで情報収集感度は高まるそうです。
アンテナが張られると、必要な情報に気付く”目”ができます。一見すると無関係に見える事柄からも、必要な情報を拾ってこられるところが「アンテナ張り」の真骨頂です。
ある特定のテーマで断続的に文章を作成している人であれば、「ネタづまり」を起こさないためにも、そのテーマでアンテナを張り続けておくことが大切です。
視覚化すると「アンテナ感度」が増す
自分の中の「問い」をノートに書き出すことで、「アンテナ感度」がさらに増します。
なぜなら、頭で考えたことは「もや」に過ぎないからです。
「もや」をノートに書いて棚卸しすることで考えが視覚化され、新しい気づきが生まれてきます。
棚卸しの作業は、実はそれ自体が、思考の「整理→再構築」の役割を果たすのです。なぜなら、「書くこと=考えること」だからです。
それまで「何を書けばいいかわからない」と頭を抱えていた人でも、棚卸しをしていくうちに、頭のなかの「もや」が少しずつ腫れていき、気付いたら「自分の考えがまとまっていた」というケースが珍しくありません。
文章作成は「疑問」からはじまる
「何を書けばいいかわからない」、その悩みの現況は「疑問」の量の少なさです。
著者いわく、「疑問」がなければ人は進んで調べようとも、進んで理解しようと思わない。疑問は掘り下げるほど深い知識をそろえてくれるそうです。
「疑問」をもった瞬間から、「情報収集アンテナ」が張られます。
「疑問」という言葉が嫌なら、「興味」や「感心」と言い換えてもOKです。あなたのなかに「興味」や「感心」の量が増えれば、おのずと吸い寄せられる情報量が増えて、文章作成がしやすくなるはずです。
メモが「書けないあなた」を助ける
「うまい文章」を書いている人ほどメモという武器を上手に使います。
メモが生み出す4つの効果
- 記憶効果
- 情報生み出し効果
- 気づき効果
- アイデア効果
著者いわく、メモからさまざまな得た着想は、オリジナリティに富んだ文章のテーマや切り口に繋がります。
視覚化した複数のメモ(情報)を見比べることで、大小様々なアイデアが生まれやすくなるからです。アイデアは「異なる要素の組み合わせである」とよくいわれますが、この組み合わせの実現にメモが役立つのです。
もちろんこうしたアイデアは、そのまま「文章のネタ」としても使えます。つまり、メモからさまざまな着想を得て、オリジナリティに富んだ文章のテーマや切り口を見つけることができるのです。
メモの活用方法
- 印象深い出来事や、自分の感想などを積極的にメモする。
- メモを眺めながら、無関係に情報同士を見比べる(共通点や相違点を探したり、情報同士を結びつけたりする)
書く前に、口でうまく説明する
著者いわく、「書く」も「話す」も、同じ「思考のアウトプット」です。
したがって、文章を書くのが苦手な人は、書く前に一度、各内容を人に話してみると良いそうです。
情報を理解・整理するトレーニングになるほか、文章作成する際の下書き代わりにもなるからです。
特定の分野の文章を書いている人であれば、日ごろから「口でうまく説明する」エクササイズに取り組みましょう。情報の「整理→理解」がすすみ、専門性も強化されます。
情報は2種類「あっち情報」と「こっち情報」
著者いわく世の中には、「自分以外の周辺にある情報(周辺情報)」と「自分のなかにある情報(自分情報)」の2種類あります。
同じテーマでも周辺情報と自分情報とで、違う文章を書くことができるのです。
文章作成の目的により使い分けて書くことが必要になります。また、どちらか一方ではなく両方揃えておくとバランス良く文章を書けるようになります。
以降の章
以後の章では「周辺情報(あっち情報)」「自分情報(こっち情報)」「うまい文章にするための『見取り図』ワーク」「文章あてはめのフォーマット」「SNSので使える文章術」「文章の磨き上げの技術」が解説されています。
書くために「整理された情報」を使うことで、その後の文章術がさらに活きます。
「何を書けばいいか分からない方」や「文章がうまく書けない方」は、「うまく」「はやい」文章を書くために、「情報整理の方法」から入ってみるのはいかがでしょうか?