今回は、『孫社長にたたきこまれた 「数値化」仕事術』の紹介です。
著書である三木雄信によって、数字に苦手意識を持っている方に向けて書かれた
数字を自ら武器に変えることで、現場の人間がボトムアップで経営層や管理職層を説得したり、自分のやりたい提案を通したりできるようになる
引用:Kindle版 p16「はじめに」より
ために「数値化」を取り入れた仕事術の本です。
数値化するときの考え方や法則、エクセルを用いたカンタンなデータ分析法や便利なツールについて紹介されています。
仕事やコトモノを数値化して考えるということを知ったときは目から鱗でした。
引用:Kindle版 p20より
「数字」を使うことで、現実に起こっている事象を数値で把握し、それを分析して問題のありかと根本的な原因をさぐり、解決策を考えて実行。さらにその結果をまた数値で把握・分析することによってPDCAを回し、超高速で問題を解決していくといいます。
本書の構成
- 数値化することで問題を超高速で解決できる
- 数値化の効用と、数値化仕事中の基本
- 具体的なデータ分析法
- 「間違った数値化」を続けている人が陥りがちなワナ
- 数字にまつわる様々な法則や理論
- ケーススタディとしてソフトバンクの「3っ次元経営モデル」
なぜ「数値化」すると生産性が劇的にアップするのか
コトモノを数値化する大きなメリットの1つは、「目標達成までに何をすべきか」という具体的なアクションが見えてくるということです。
仕事やビジネスの問題解決において、問題を数値化することで、次に取るべきアクションが具体化し、解決に向けて動き出せる。問題を数字に置き換えることで、現状を正しく把握し、問題の根本的な要因を明確にできるのだといいます。
そして、数字は誰にとっても絶対的な事実です。
立場や地位の高い声の大きい人でもその事実を変えることは出来ません。
数字で示すことで上司をも動かしやすくなります。
数値化の目的は、「どうだったか」ではなく「どうするか」
過去の分析は重要ですが、数値化の目的は「次はどうするか」の意思決定をするための材料であるということ。
言い換えると、「未来=次のアクション」につながらない数値化は、意味がないということです。
たとえ現時点で数値が悪くても、その数字にもとづいて「次はどうするか」を考え、適切なアクションをとって修正できれば問題ないどころか、むしろ評価に繋がります。
数値化の最初のステップは、「分ける」
「数える前に、分けろ」
これが数値化仕事術の鉄則であるということです。
分け方は、種類別やジャンル別だけではなく、始点(インプット)と終点(アウトプット)のプロセスで分けるのも問題解決に繋がる有効な手段であるといいます。ステップに分けて計測することで、どのステップに問題があるのかが判別がつくからです。
どんなに大きな問題も、細かく分けて計測することで、ボトルネックが発見に繋がります。
数値化のゴールは、現実の問題を「数式で表す」こと
「データ」とはそれ自体は意味のない数字です。
このデータを使用して、現実のモヤモヤした問題や現象を、数式に置き換えて構造化することで解決に繋げていきます。
著者いわくビジネスの世界で起こるさまざまな事象は、すべて数式で表すことができるといいます。
そして、数式であれば必ず解くことができるということです。
だからこそ、著者は「数値化することで問題を解決できる」と述べています。
数値化したら、あとはPDCAを高速で回し続ける
数字を使うことで、現状を分析して予測が出せます。
そして、それをもとに計画を立てられますが、その通りになるかどうかは実際にやってみなければわかりません。
実行の結果を数値で計測し、検証して、問題が解決しなければ、さらに別の解決策を実行する。
このPDCAサイクルを高速で回し続けることが、目指すゴールに最短で到達する方法であると述べています。
P(計画):問題を数式で構造化し、それぞれの数字の関係を理解し、計画を立案する。
D(実行):計画を実行する。
C(検証):計画と実行の差異を分析し、何が問題なのかを優先順位をつけて把握する。
A(改善):改善策を実行する。
引用:Kindle版 p616ページより
問題解決後も数字でチェックを続け、環境変化にいち速く気づく
数値化によって問題を解決しても、新たな問題は次々に発生します。
そして、いったん目標を達成しても、次の目標を達成することが求められます。
ビジネス環境は刻々と変化するため、いったん成功した数字の分け方や数式も、時間が過ぎれば現状とかけ離れたものになっていくものです。
そのため、過去の事例を似たような場面で同じような仕事をする時でも、今の状況に合った分け方を定義し、数式も時代に即した新たなものに変えていかなくてはいけないということです。
現代ビジネスにおいて重要な「5つの数字」
著者いわく、会社の経営はシンプルに「5つの数字」で構造化できます。
- 顧客数
- 顧客単価
- 残存期間(顧客でいてくれる期間)
- 顧客獲得コスト
- 顧客維持コスト
会社の経営はこの5つの数字をコントロールすることで成り立っています。
そして、会社にとって最も重要な営業利益も数式で表すことが可能です。
(顧客数×顧客単価×残存期間)ー(顧客獲得コスト+顧客維持コスト)=営業利益
すなわち、会社の利益を最大化するためにコントロールする数字はこうなります。
- 「顧客数」「顧客単価」→上げる
- 「残存期間」→長くする
- 「顧客獲得コスト」「顧客維持コスト」→下げる
5つの数字を上げ下げして、利益を最大化することが会社経営の究極の目的と言えます。
データとして数値を収集できるようになった現代では、昔とは比べ物にならないほど低コストになっています。
その結果、数字をうまく活用している人・企業と、勘や経験則に頼っている人・企業とで、大きく差がついてしまっているといいます。コストをかけなくても数字を集められるので、予算や人手が少ないベンチャー企業や中小企業でも数値化スキルさえあれば、大企業に打ち勝ったり、世界のあり方を変えるようなイノベーションを生み出すことが可能だということです。
これは予算や人手がある大企業でも、数字を使いこなせなければたちまち追い抜かれて、衰退してしまうことを意味しています。
以降の章では、「問題を解決に役立つ『データ分析・七つ道具』」、「よくある『間違った数値化』と気をつけたい3つのワナ」「『数字に強い人』は知っている理論・法則」「究極の数値化仕事術・ソフトバンクの『3次元経営モデル』」と続きます。
仕事をより効率的に進めたい方や、問題解決に数字を使用したいがやり方がよくわからない方、数字に苦手意識を持つ方などにはオススメの一冊と言えます。
PDCAを効率よく高速で回す方法について、こちらの記事で紹介しています。