一般的に起業に関する本では、「起業」を組織で始めることに限定していますが、一人で始める独立開業も立派な「起業」です。
今回ご紹介する『起業は1冊のノートから始めなさい』(著 上野光夫,ダイヤモンド社)の著者も同じように考える方の一人です。
26年にわたり金融機関に勤めて、約5000人の「これから起業する人」への融資を担当してきた著者ですが、起業して成功する人と失敗する人の違いは「起業するまでに綿密な準備をしてきた起業家こそ、事業を軌道に乗せている」という結論に至りました。
本書では、起業準備にかける機関を「1〜3年」と定め、その間に取り組むべき準備について「起業ノート」を活用した方法を具体的に記しています。
起業で成功する人はみんなノートをつけていた!
起業準備のためにお勧めしたいのが、手書きのノートを活用することです。
そのノートには、ビジネスのアイデア、経営ノウハウ、行動計画など、起業準備をしている過程で発生するさまざまな情報を記録していきます。とても原始的な方法のようですが、ノートをつけることによって、起業の計画を徐々にブラッシュアップしていくことができます。
(中略)
事実、起業して事業を軌道に乗せている起業家は、なんらかの形で起業の準備過程を記録しています。逆に、いつまでも起業できない人や起業してもうまくいっていない人は、記録を残していないことがほとんどです。起業準備の記録は、起業を実現させるまで、あるいは起業した後でも、トラブルに直面するなど窮地に陥ったときに、自らを助けてくれる心強い指針となってくれるものなのです。
(「手書きのノートが強力なツールになる」Kindle145ページより)
「起業ノート」をつける3つのメリット
- 思考を整理できる
- 不足しているスキルやノウハウが明確になる
- 起業準備の進捗状況や確認ができる
著者は、起業ノートに特別な決まりはなく、「携帯できるもの」「何冊も使うことが前提」「愛着がわくもの」を使うのが良いとしています。
さらに、事業プランがまだ決まっていなくても、起業ノートをうまく活用することで起業を実現し事業を反映させていくことができるということです。
事前準備をあらかじめ決め、それに基づいた行動を行っていくために「起業ノート」は不可欠であると言えます。
この人は、1年間に務めていた会社をリストラされて、やむなく起業を考えたのですが、「最初はどんな事業で起業するか皆目見当がつかなかった」とのこと。ノートの初めの頃のページを見ると、「年齢的に再就職は厳しいし、起業するとしても何をやったらいいのだ?」と悩める心情が赤裸々に綴られていました。
(中略)
このノートには、地域の人口の年齢構成など介護事業に関する市場分析データや、競合となる施設の詳細な調査結果も記載されていたのことから、収支データや競合となる施設の詳細な調査結果も記録されていたことから、収支見通しを算出する根拠について、「これでもか」というほど説得力がありました。
(「プランがない人でもノートをつけて起業できた」Kindle218ページより)
「起業ノート」で乗り越えられる「起業家が直面する3つの壁」
- アイデアの壁
- 行動力の壁
- マインドの壁
著者は、事業が継続できなくなる主な原因が「資金が底をつく」をあげています。
起業をした後の事業を継続するために、準備段階で「起業ノート」に記したことは役に立つ指針として「壁」に直面して余裕がないという場面から救ってくれるということです。
ノートの最初に書く「7つのチェックリスト」
- 動機と理念を固める
- スケジュールを策定する
- ビジネスモデルを検討する
- 起業家としてのマインドを強化する
- 足りないスキルとノウハウを補う
- ビジネスに必要な人脈を形成する
- 事業計画を練り上げ、経営資源を整える
著者は、起業準備に必要な行動をもれなく行っていくためにチェックリストを使用し、試行錯誤はすべて記録することが大切だといいます。
起業準備段階でやるべきタスクを抽出し、実際に行動に移すことで疑似体験ができるからです。
起業後にする失敗と起業前にする失敗ではダメージが異なるため、起業前に実践できることは、できるだけすべてやっておくことが大切だということです。
以降の章について
以降の章では、「起業をする理由を明確にする」「独立する日を先に決める」「大量のアイデアを書き出す」「起業の不安を乗り越える心の準備」「足りないスキルとノウハウ」「ノートを使った人間関係力」「事業計画の練り上げ」について詳しく説明されています。
「起業家に投資する立場」と「自ら起業する立場」の2つの視点を持つ著者。
通常の起業家が書いた本とは、また違った視点での成功法則が書かれたと言える1冊です。
これから独立・起業に興味がある方や、既に起業準備に入っている方はぜひ手にとってはいかがでしょうか。