「才能は生まれいてのもので、努力ではかなわない」
そう考えられていたのは昔の話です。
成功を決めるのは、「才能」でも「知能指数」ではありません。
まして、「気合いでやる!!」といった根性論でもありません。
「困難があっても、続ける力」
「情熱を持って取り組む粘り強さ」
それこそが、いま世界的に注目を集めている「GRIT(グリット)」なのです。
私たちは、成功した人の功績を見るとつい「才能があったから」と思い込んでしまいます。
しかし、それは既に達成された偉業に注目するからで、その過程には私たちはまったく同じ困難や挫折があるはずです。
彼らはただそれを乗り越えて、続けられただけなのです。引用:Kindle版36ページ 「はじめに」より
今回は、そのグリットについて脳科学の知見から書かれた『続ける脳 最新科学でわかった!必ず結果を出す方法』(著 茂木健一郎,SBクリエイティブ)のご紹介です。
続ける人には誰もかなわない
「GRIT(グリット)」とは、アメリカのペンシルヴァニア大学教授の心理学者、アンジェラ・リー・ダックワースがTEDで提唱した「成功にもっとも関係の強い要素を持つ概念」です。
その人が成功するかどうかは、生まれ持った才能でも、知能指数でもなく、情熱を持って何かを継続する力があるかどうかに左右されるということです。
周りに馬鹿にされても自分自身を信じてとにかく続ける。
そこに才能の良し悪しは関係なく、粘り強く続けた先で結果に繋がるといいます。
GRIT(グリット)の5つの鍛え方
著者いわく、脳科学的に見てもGRIT(グリット)は何歳からでも鍛えらるということです。
目標を達成する強い意志を持ち、やり続けることは「前頭葉」が司る機能だといいます。
人間の機能の中で一番遅れて成熟して行く場所である「前頭葉」は、思春期を過ぎても発達し続けるのだそうです。
つまり、脳の中で一番、訓練が効く場所ということです。
「人生の成功は、IQやセンスなど、生まれつきの才能が決めるのではない。情熱を持って物事を続ける力こそが決める。そして、その力は鍛えられる。」ということです。
才能がある人よりも、続ける人のほうが成功に近づくのですから、すべての人に希望がある心理なのです。
引用:Kindle版196ページより
GRIT(グリット)の鍛え方1:根性論を捨てる
一つ目はこちら。GRIT(グリット)はいわゆる根性論や精神論ではありません。
著者いわく理由も問わず、従い続けるというのは、脳の反応として、あまりにも単純で、非合理的だからということです。
「正解は一つ」という単一な考え方に陥りがちなのが「根性論」です。しかし、「GRIT(グリット)」はまったくの反対。
やりたいことを続けるうちに、さまざまな困難と学びに出会い、多様な答えを認める側面があるというのです。
本文中に”一つのことだけをやっていれば、道が開けるというものではないのです。”という一節があります。
それは「一つのことを、あらゆる視点からやる」と言えます。
GRIT(グリット)の鍛え方2:欲望をコントロールする
欲望のコントロールは、人生の目標達成に欠かせない要素の一つと言われています。
前頭前野の身体をコントロールする部分。ここが意図や意思決定を支える中枢といわれるとのこと。
意思決定を司る「前頭前野」と、前頭前野により指令を出される「前頭前野以外」の2つの領域が継続することにより鍛えられ発達していくといいます。
自分が欲望を持った時に、満足を先送りにして一時的な欲望を抑える能力が、人生において重要な意味を持つのだということです。
GRIT(グリット)の鍛え方3:柔軟に継続する
GRIT(グリット)の計測項目の中には、「他のことに興味を持つと、今やっていることをやめる傾向がある」というものがあります。
この傾向が高いと、GRIT(グリット)の点数が下がるそうですが、著者はダックスワースのこの計測に異論を唱えています。
「『続ける』とは、最後まで同じ続けることを意味しない」というのが著者の考えです。
その例えとして、さまざまな事業に手を広げながら、一つの会社が大きくなっていくということを挙げています。
「一つしかやらない」が、継続なのではなく、フレキシブルであるからこそ、存続できるのだということです。
GRIT(グリット)の鍛え方4:無駄を歓迎する
GRIT(グリット)とは、一つの大きなゴールを目指して、さまざまな種類の小さな努力を積み重ねること。
著者によると「私達のそれぞれの目的は、単一の努力を重ねるのではなく、さまざまな種類の努力からできる1つの生態系の中で達成される」ということです。
その中で、何が達成の助けになるか見極めるのは困難です。
何に価値があるか分からない中では、今の「無駄」が後の大きな結果に繋がるのだといいます。
同じような表現を「スティーブ・ジョブズ」も2005年のスタンフォード大学のスピーチにて『バラバラの経験であっても、それが将来に何らかの形で繋がる。』と「点と点が線になる」表現しています。
>>2005年スタンフォード大学の卒業生へと向けたスピーチ(原文)
GRIT(グリット)の鍛え方5:自分らしさを追求する
「成功=大きな夢」ではありません。
著者いわく、「自分らしく生きるためには、どうしたらいいか?」という問いこそ、グリットの本質を捉えているといいます。
たしかに、本書にて成功者としてあげられている人たちは、皆華やかな栄光を手に入れています。
しかし、彼らは「自分自身でそれに価値を見出した結果そうなった」のであって、他人に成功を定義されたわけではありません。
どんな人にもその人のGRIT(グリット)があり、それは間違いなく素晴らしい行為です。
自らの条件を引き受けて、他人の条件から自由になることこそGRIT(グリット)を鍛えるということだといいます。
以降の章について
以降の章では、意志に頼らない脳活用法として『続ける脳のつくりかた』、多様性による偶然の幸運を見つける『脳がよろこぶ夢の見つけ方』、集中するフローについて『「今・ここ」に集中する力』、個これが折れたらどうするかについて『立ち直る力』、GRIT(グリット)的な子育てについて「子供の継続力を伸ばす」で構成されています。
構成をまとめるとこうなります。
構成まとめ
- GRIT(グリット)について概要
- 継続する脳の作り方
- GRIT(グリット)を鍛える「夢」や「やりがい」の見つけ方
- 「課題没頭する条件について」と「集中の作り方」
- 継続する上で、避けては通れない失敗と挫折からの立ち直り方
- 子育てにおける厳しいしつけとGRIT(グリット)の関係性
私は正直、この本に救われた部分があります。
継続というのは、挫折や失敗もせずに続けることだと思っていたからです。
失敗や挫折も継続のサイクルとして考えて夢を目指し続けるということを教えてくれた本書「続ける脳 最新科学でわかった!必ず結果を出す方法」。
達成したい目標や叶えたい夢がある方、そして、その中で失敗や挫折を味わっている最中の方。
方法論だけではなく、気持ちを持ち上げてくれる本としてもこの本をお勧めします。
GRIT提唱者のアンジェラ・ダックワースの本は、こちらの記事で紹介しています。